アール・ヌーヴォー&アール・デコ/ガラス

ドーム

『湖畔風景文花器』

20世紀初頭

フランス





シルエットになった岸辺の樹々・・・

夕陽を映す水面のさざ波・・・

晩鐘が聞こえてきそうな向う岸の尖塔・・・

おぼろげに浮かぶ遠い山並・・・

ロマンティックでうっとりとする夕暮れの湖畔風景が

複雑で細かな酸化カメオ彫りと

高度なパート・ド・ヴェール技法を組み合わせて

マーブル模様のオレンジと渋く厚みのある深紅で

詩情豊かに描かれている・・・

並みの風景文作品とは一線を画す

とても凝った作行きの

非常に飾り映えのする40cm超の作品です!!!


Daum
The lake scenery grand vase on 'piedouche' by 'Pate de Verre',
marbled orange and dark red,
signed (cameo mark) 'Daum Nancy' with a cross of Lorraine.
41cm high.


ドーム [ Daum ]

20世紀初頭 フランス / ナンシー

側面下部に ” DAUM NANCY ‡ ” の陽刻サイン(酸化腐食彫り)有り

※ ‡ : ロレーヌの十字架 [ 仏語 : croix de Lorraine / 英語 : cross of Lorraine ] と呼ばれている
     フランス/ロレーヌ地方(ナンシーのあるフランス北東部)で使われていた十字架マークです。

サイズ : 高さ 41.0cm± 台座の幅 12.3cm±


マーブル(大理石)に似たオレンジ色の地模様が施された半透明のガラスに、こげ茶に近い渋い色合いの 深紅の色ガラスを被せ(作品の中や後ろに光源を置くと彩度が格段に増します)、 非常に丁寧なカメオ技法(酸化腐食彫り)によって、湖畔風景の写実的で繊細な装飾が施されています。 また、岸辺の木立(主に上部)には、パート・ド・ヴェール技法による凹凸(盛り上がり)のアクセントが、 非常に効果的に付けられています。

ちなみに、パート・ド・ヴェール [ Pate de Verre ] とは、古代のガラス作品でも見られる、色ガラスを粉末にし、 耐火性の型に入れ、その型ごと窯の中で焼き上げるという、七宝工芸と陶芸とガラス工芸のテクニックを 融合したような技法で、その膨大な手間(※)とクォリティー・コントロールの難しさから、 現代ではほとんど用いられていません。また、ほぼ全てのパート・ド・ヴェール作家が、その技術を 一子相伝の秘法として公開しなかったため、このテクニックを駆使できる作家も非常に少なく、 人類にとって”ほとんど”ロスト・テクノロジーとも言える幻の製法となっています。

※ 例えば、型から取り出した作品は、溶融成型した表面を注意深く丁寧に研磨しなくてはなりませんが、 その作業には非常に手間を要したそうです。それ故、パート・ド・ヴェールの作品は量産には向かず、 こういった芸術ガラス作品の製法としてのみ伝えられました。

コンディション : 詳細に診れば、多少の汚れが一部有り、更に厳密に診れば、 (制作後、約100年近く経過しているガラス作品ですから自然な事ですが)多少の擦れや スクラッチ(引っかき傷)、あるいは、ピンホール・ニック(針の先で突いたような刻み目や穴状のくぼみ)等も 有るかもしれませんが、写真の通り、問題になるような大きな瑕疵(かし)は無く、全体的には、完品と言える程の、 大変に良好な状態を保っています。

パート・ド・ヴェール作家の第一人者と謳われるアルマリック・ワルター(※)は、 本作品が制作された20世紀初頭には、その高い技術を請われ、しばらくの間、 ドーム工房付きの作家として活躍していましたので、本作品の制作にも関わっている可能性が 有ります。

※ アルマリック・ワルター [ Almeric Walter ] ( フランス : 1859 - 1942年 )

古代ガラスの失われた技法であったパート・ド・ヴェールは、工芸作家のアンリ・クロや(上述の) アルマリック・ワルター等の血の滲むような努力によって、アール・ヌーヴォー期のフランスで蘇りましたが、 あまりに手間のかかる技法ゆえに、パート・ド・ヴェール技法を駆使して制作された作品数は元々多くなく、 現存数は更に少ないため、希少性の高い入手困難な作品となっています。

参考価格 : 百貨店が主催する展示即売会等では、250万円前後の価格で売られると思います。

※ 本作品は、一見、不安定そうにも見えますが、底部が重いため、実際は結構倒れ難く安定感があります。
   ただし、念のため、作品の転倒を防止するアンカー・ワックスを(少量ですが充分な量だけ)お付けします。

※ こういったガラス作品は、掲載写真の色合いの違いでもお判りのように、照明の当て方で、かなり異なって見えます。

※ 本作品の様な濃い色合いのガラス作品は、光源(電球)を中や後ろに置く事で、黒っぽい部分の色が、より鮮やかに見えます。


※ 専門家の鑑定を経ないで直接出品できるフリーマーケット的なネット・オークションでは 仕方ない事だとは思いますが、東欧あたりで現在作られているガレやドームの (真新しい)コピー商品の表示の一部(例えば、ガレやドーム・タイプのものだという事を 示すために、サインの脇に入れられている”TP”の文字等)を削り落されているものや、 欧米の蚤の市で売られている様なわざと古色を付けた悪意のある明らかな贋物が 出品されてるケースを時折見かけますので、何卒、お気を付けくださいませ。



※写真は、焦点があまく、多少の歪みと写り込みが有り、実際の色と若干異なっています。


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on request \710,000. hitano '03/9/29
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